呉須とは|染付の藍を生む、窯の中で青くなる顔料

乳白釉のピッチャーとマグ2客。マグの胴に呉須の細い藍線が一本ぐるりと引かれ、土のこげ茶がところどころ視く

呉須(ごす)とは、酸化コバルトを主成分とし、鉄やマンガンを含む鉱物性の青い顔料です。染付の藍色は、すべてこの呉須から生まれます。

焼く前の呉須は、黒っぽい泥か灰色の液体にしか見えません。それを素焼きを終えた素地に描き、透明釉をかけて約1,300℃で焼くと、はじめて澄んだ藍へと劇的に変化します。

もとは中国から輸入される高価な材料でした。江戸期以降は国内でも生産が進み、有田・波佐見・瀬戸といった染付磁器の産地を支える基本素材となっています。

なぜ焼くまで色がわからないのか

呉須の青は、コバルトが釉薬のガラス質に溶け込んではじめて発色します。素地に塗られた段階のコバルトは、まだ酸化物の粉のまま。高温で釉が溶け、その中にコバルトイオンが分散したとき、光の吸収の仕方が変わって青く見えるようになります。

そのため描き手は、焼き上がりの色を見ないまま線を引きます。頼りになるのは線の濃さだけです。濃く塗れば濃紺に、薄く塗れば淡い水色に近づく。この予測を何百枚と繰り返すうちに、手が色を覚えていきます。

そして同じ呉須でも、窯の温度と空気(酸化・還元)によって青の質が変わります。還元焼成では澄んだ青に、酸化焼成ではやや灰色がかった青になる。産地ごとの「有田の青」「砥部の青」といった差は、この焼き方の違いから生まれています。

呉須の種類と色の幅

種類 主成分の傾向 焼き上がりの青
唐呉須(からごす) 中国渡来の天然呉須。鉄・マンガンを多く含む 紫がかった深い藍。にじみが出やすい
和呉須(わごす) 国内産の天然呉須 やや灰色を帯びた落ち着いた藍
合成呉須 精製した酸化コバルト 純度が高く、鮮やかで均一な青

骨董の染付が持つ深く沈んだ藍と、現代の磁器の澄んだ青の違いは、多くの場合この原料の違いによるものです。不純物が多いほど青は複雑になり、精製が進むほど鮮やかで均質になります。

陶器に呉須を使うと

呉須は磁器だけのものではありません。冒頭の写真のように、陶器の白い釉の上に一本だけ呉須の線を引く使い方もあります。

磁器の白は均一なので、呉須の青は輪郭のはっきりした線になります。一方、陶器の土の上では釉が動きやすく、線はわずかににじみ、ぼやけた表情になる。同じ顔料でありながら、素地が変われば線の性格まで変わるのが、呉須を見る面白さです。

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FAQ

陶芸で使われる呉須とは、どのような絵の具ですか?
コバルトや鉄、マンガンなどの成分を含んだ、日本古来の鉱物性の青い絵の具(顔料)です。窯で焼く前の素焼きの段階では、一見すると黒っぽい泥や灰色の液体のように見えますが、その上から透明な釉薬をかけて約1,300度の高温で焼き上げると、美しい藍色へと劇的に変化します。この呉須で白い磁器に絵を描いた器が染付です。
なぜ呉須の青は産地によって違うのですか?
原料の純度と、焼き方の違いによるものです。天然呉須は鉄やマンガンを含むため紫や灰色を帯びた複雑な青になり、精製された合成呉須は鮮やかで均一な青になります。さらに窯の空気を絞る還元焼成では澄んだ青に、酸素を送る酸化焼成ではやや灰色がかった青に転びます。
呉須で描いた線は落ちませんか?
落ちません。呉須は透明釉の下に封じ込められて焼かれるため、ガラスの層が絵を守っています。金属たわしでこすっても、食洗機にかけても、線が薄くなることはありません。これが釉の上に描く上絵付けとの最大の違いです。

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