作家 藤原章|窯から引き出して、備前を黒くする

備前焼と聞いて思い浮かぶのは、たいてい赤茶色の肌です。釉薬をかけず、土と炎だけで焼く。そう説明されることの多い産地です。
藤原章氏の器の特徴は備前中でも、黒い「黒備前」。2種類の「黒備前」を手掛けます。1,200℃の窯から作品を外へ引き出し、空気に触れさせて急冷することで黒さを出す方法。もう一つは、鉄分の多い土を表面に塗ってから焼く方法です。どちらも釉薬ではありません。備前の技術を活かしながら、土と炎に委ねながら、独自の作品を手掛けています。
藤原章氏は備前焼の中心、伊部から少し北に上がった岡山県和気郡和気町の父井原(ちちいばら)で、すべてを一人で作っています。
「黒備前」釉薬ではない、自然由来の備前の黒
備前焼は日本六古窯の一つで、釉薬を使わずに焼き締める産地です。土に含まれる鉄分、窯の中の灰、炎の通り道。この三つだけで表面が決まります。藁を巻けば緋襷の赤い線が走り、灰が溶ければビードロの緑が流れる。どれも人が塗ったものではありません。
藤原章氏の黒備前も同じです。土と炎に委ねた2つの技術で作陶し、「黒備前」を手掛けています。
- 引出し黒 1,200℃という窯の最高温度のときに、作品を窯の外へ引き出します。急激に冷やし、強還元の状態をつくることで黒く発色する。窯を開けて取り出すので、一度に出せる数が限られる限定感のある「黒備前」です。
- 伊部手(いんべで) 鉄分の多い土を器の表面に塗ってから焼きます。塗った土が焼成で黒く変わる。落ち着いた黒になります
同じ黒でも、手触りも艶も違います。引出し黒は金属のような光が出て、ところどころに朱が差す炎が手掛けた色合いを楽しめる作品。伊部手は艶を抑えた、炭のような黒になります。焼き締めの器がこれほど色を変えられるということ自体が、この作り手の仕事を見ていて面白いところです。

黒だけではない──赤土と、白備前
藤原章氏の作品は黒が軸にありますが、備前らしい作品も多くあります。
赤土を使ったものは、備前らしい橙赤の肌になります。土本来の力強さを出した下記のような作品です。徳利の胴に黒い焦げが落ち、ぐい呑の口縁は灰色に抜ける。窯のどこに置かれたかが、そのまま残ります。

白備前は、粘土そのものが白い土を使います。備前で白い器を見ることはほとんどありません。抹茶碗は三つ足の高台で、ざらついた白の肌に小さな黒点が散ります。

さらに、釉薬をかけないまま自然釉をまとった酒器もあります。赤松の灰が1,200℃で溶け、ガラスのような光沢になったもの。薪窯の灰がそのまま釉になる現象で、備前ならではの自然に全てを委ねた作品が生まれます。
備前焼をうまくお手入れする方法
備前は釉薬をかけないので、土が水を吸います。使い始めに目止めをしておくと、油染みが入りにくくなります。小麦粉や米のとぎ汁で20分ほど弱火で煮て、そのまま冷ましてから洗うだけです。
使ったあとは早めに洗い、しっかり乾かしてからしまってください。乾ききらないままだとにおいが残ることがあります。陶器の手入れに、磁器との違いを含めてまとめてあります。
備前は使うほど変わる器です。黒も赤土も、手の脂と水分を吸って少しずつ艶が深くなります。買ったときがいちばん綺麗、という器ではありません。育てる楽しみを感じながら、器との生活をお楽しみください。
備前について、歴史をさらに知るとより一層楽しむことができます。下記に備前について知るための記事をまとめておりますので、参考にしてみてください。
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藤原章の器
酒器を中心に、引出し黒、伊部手、赤土、白備前と、同じ備前で色が分かれた作品を多く取り扱っています。すべて一点ものなので、気になったものは早めに手に取ってください。
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藤原 章
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