しのぎとは|手で一本ずつ削り出す稜線

日本の陶磁器の表面装飾のなかで、しのぎ(鎬)ほど静かな存在感を放つものは多くありません。絵付けも派手な色彩もなく、刻まれた溝の陰影と、そこに流れる釉薬の濃淡だけで表現されます。
語源は日本刀の「しのぎ筋」、刃の側面にある盛り上がった稜線に由来します。器におけるしのぎとは、表面を削って幾重もの筋と凹凸をつくり、立体的な削り目で包み込む技法を指します。
絵付けのように上から描くのではなく、素地そのものを削り出すため、模様が器の一部として一体化しているのが特徴です。
しのぎの器だけを集めたページがあります。→ 鎬(しのぎ)
どうやって削るのか
粘土が乾燥して「革(レザーハード)」の状態になったとき、職人はカンナやヘラで表面を削り落とします。薄く削ぎ落とすことで、削り跡の横にひとつずつ稜線(山)が残る。この作業を繰り返すことで、連続したリズミカルな山と谷が形成されます。
しのぎの魅力が際立つのは焼き上がりの瞬間です。施された釉薬は高くなった稜線では薄く流れ、削られた溝には溜まる。そのため単色の釉薬であっても、濃淡の美しいグラデーションが生まれます。
青磁やマットホワイトの釉薬を施すと、光の差し込む角度によって表情を変え、シンプルな器に静かな躍動感と奥行きを与えます。削る速さや加減、手の動きがそのまま現れるため、ふたつとして同じ表情の器は存在しません。

しのぎが愛される理由
- 単色釉から生まれる奥行き 削り出された線に釉薬が流れて溜まることで、一色の釉薬が多様な表情へと変化します。
- 心地よい手触り 指先に触れる凸凹とした立体感が、カップや鉢を手に取る心地よさを高めます。
- 使い込むほどに育つ味わい 長年使うことで釉薬が馴染み、柔らかい光沢を帯びていきます。経年美化を楽しめる器です。
- すべてが一点もの 手仕事ならではのリズムと個性が、刻まれた一本一本の溝に宿ります。
しのぎと面取りの違い
| 項目 | しのぎ | 面取り |
|---|---|---|
| 削り方 | 細い溝を連続して彫る | 幅の広い平面を削ぎ落とす |
| つくるもの | 「線」をつくる | 「面」をつくる |
| 横から見ると | 細い筋が走っている | 平面が並んでいる |
| 釉の見え方 | 溝に溜まり、縞の濃淡になる | 面ごとに光の当たり方が変わる |
Nokazeが届ける2つのしのぎ

山本 雅則(信楽焼)
祖父から受け継いだ伝統の窯で制作を行う山本雅則さんは、信楽焼の伝統を背景に、緻密で味わい深い手削りのしのぎ作品を手掛けています。
くっきりと際立つ美しい稜線は、リム皿、スープカップ、カレー皿、湯呑み、マグカップ、小鉢、酒器など多岐にわたり、毎日の食卓で手や料理にやさしく寄り添います。

樹の音工房・佐藤 朱音(会津本郷焼)

福島県・会津の「樹の音工房(きのおとこうぼう)」で作陶する佐藤朱音さんは、落ち着いたマットホワイトやマットブラックの仕上がりで、やわらかく均一なしのぎを削り出しています。
会津本郷焼の伝統に根ざしながら、「日常で使いたくなるうつわ」をテーマに制作。絵付けの作品もあれば、モダンで穏やかな表情のしのぎの作品も。個性的な作品たちは、どんな食卓にも自然と馴染みます。

このふたりを含め、しのぎと削りの器は鎬(しのぎ)にまとめています。皿・鉢・マグ・箸置きまで揃うので、同じ削りで食卓を組むこともできます。
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溝に溜まった釉を見る
稜線では薄く、溝では濃く。しのぎの器は、単色の釉でも光の角度で表情が変わります。
鎬のうつわを見るFAQ
面取りとしのぎは何が違いますか?
しのぎの器は日常使いでお手入れが難しいですか?
しのぎの器は料理を選びますか?
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