荒練り(あらねり)
荒練りとは、器を成形する前におこなう二段階の土練りのうち、最初の練りを指します。「荒」は粗い、「練り」はこねること。保管から出したばかりの、状態のばらついた土の塊を押しては折り返し、水分と硬さを全体で均一にし、内部に閉じ込められた大きな気泡を追い出す工程です。
器づくりのなかで、もっとも目立たない作業かもしれません。かたちは何も生まれず、装飾もされず、完成した器に荒練りの痕跡が見えることもない。それでも、荒練りを経ていない土は轆轤の上で作り手に逆らい、乾燥中に歪み、最悪の場合は窯のなかで割れます。
荒練りのあとには、仕上げの練りである菊練りが続きます。この二つをあわせて、単に土練りと呼びます。

なぜ土は練らなければならないのか
土は、掘ってすぐ使えるものではありません。石や不純物を取り除き、水に溶いて濾し、そして寝かせる。数か月、ときには数年。寝かせることで粘りが出ますが、同時に土の状態はばらつきます。
保管から出した塊は、たいてい次のような状態にあります。
- 中心より縁のほうが乾いている(空気や袋に触れていた面から水分が抜ける)
- 押されていた部分はやわらかく、そうでない部分は締まっている
- 気泡を含んでいる(練り込みのとき、そして切って積んだときに入り込む)
荒練りは、この三つをまとめて解消します。出てくるのは、どこを取っても同じようにふるまう一つの塊です。
荒練りと菊練りの2つの土の練り方
器を成形する前におこなう土練りには二段階が必要です。どちらも土練りですが、目的が違い、代わりが利きません。
| 荒練り | 菊練り | |
|---|---|---|
| 順序 | 先 | 後。成形の直前 |
| 主な目的 | 水分と硬さを均一にし、大きな気泡を抜く | 残った細かい気泡を抜き、土の粒子を整える |
| 動作 | 押して、折り返す | 押しながら回す(螺旋) |
| 見た目 | 特に模様は出ない。ただ塊が均一になる | 菊の花びらのような螺旋が現れる。名前の由来 |
| 省くと | 厚みがばらつく/乾燥中に歪む/轆轤で芯が出ない | 窯のなかで気泡が膨張し、割れる・爆ぜる |
ひとことで言えば、荒練りは土を「均一」にし、菊練りは土を「無気泡」にする。硬い部分とやわらかい部分が混在した塊はきれいに螺旋を描かないため、荒練りを飛ばして菊練りだけを丁寧にやる、ということはできません。
荒練りのやり方
荒練りは、硬くてわずかに水を吸う面(木の板、石膏の板、石の作業台)の上でおこないます。作り手は低い姿勢をとり、板の上に膝をついたり、覆いかぶさるように立ったりします。腕の力ではなく体重で押すためです。工房の写真で、作り手が床の板に屈み込んでいる姿がよく写るのはそのためです。
手順そのものは単純で、これを何度も繰り返します。1〜2kg ほどの土なら、目安は3〜5分。量が増えれば比例して長くなり、長く寝かせた土はさらに時間がかかります。
この工程を貫く原則はひとつだけです。空気を巻き込まないこと。 土練りは引き算の作業で、すべての動作は空気を押し出すためにあります。
荒煉を行わない場合、硬い部分とやわらかい部分が混ざった土はでは、壁の厚みが揃わなかったりします。また、湿っている部分は乾いている部分より大きく縮みます。それにより、焼成した際に、器は歪み、うまく焼けない可能性があります。
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