緋襷とは|備前に走る、藁が残した赤い線

緋襷(ひだすき)とは、備前焼を象徴する鮮やかな緋色(ひいろ)の線文です。
焼成前に器へ稲藁を巻きつけて焼くと、藁に含まれる成分が炎のなかで鉄分の多い土と反応し、無釉の淡い肌に緋色の襷(たすき)状の線を残します。
焼き締めならではの緋色の景色であり、素地の静かな地色に映える紅の対比が珍重されます。
なぜ絵の具を使わないのに赤くなるのか
緋襷の線は、誰かが筆で描いたものではありません。窯のなかで自然に生まれた化学反応の跡です。
稲藁にはアルカリ分と塩分が含まれています。これが1,200℃を超える高温で、備前の鉄分の多い土と接触すると、その部分だけ酸化が進み、鮮やかな赤に発色します。藁が触れた線が、そのまま模様になる。
もともとは、器を重ねて焼くときに癒着を防ぐため、間に藁を挟んだのが始まりとされます。実用のための工夫が、いつしか意図して狙う景色に変わりました。
備前の主な景色
| 景色 | できかた | 見え方 |
|---|---|---|
| 緋襷 | 藁を巻いて焼く | 淡い地に緋色の線が走る |
| 胡麻(ごま) | 薪の灰が薄く降る | 胡麻を振ったような黄褐色の粒 |
| 桟切(さんぎり) | 灰に埋もれ、酸素が絞られる | 青灰色から黒へ変化する |
| 牡丹餅(ぼたもち) | 器を重ねた跡が残る | 丸い部分だけ色が抜ける |
いずれも備前焼の窯のなかで自然に生まれるものです。読み解き方は景色の記事にまとめています。
どの緋襷を選べばよいか
緋襷は、器のどの面に藁が触れたかで表情が変わります。中央を横切るもの、縁に沿って回るもの、交差して網目になるもの。同じ作り手が同じ窯で焼いても、二つとして同じ線にはなりません。
白っぽい淡い地色に赤い線が映えるため、盛りつけると料理の色がよく引き立ちます。無釉のため使い始めに目止めを行っておくと、シミが入りにくくなります。
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