京都で器を買う|五条坂・茶わん坂から清水焼団地まで

桜の咲く岡崎の疏水。奥に東山の稜線が見える

京都で器をお土産に購入しようと思って調べはじめた際に、どれが京都の器で、どれが京都ではないのかが難しく、躓いたことがある方はいらっしゃるのではないでしょうか。また、どこに行けばまとめて様々な場所を見て購入できるかわからないという経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

有田なら有田の町、信楽なら信楽の谷。ところが京都には、窯元が軒を連ねる一本の通りがありません。正確に言えば、かつてはありました。いまはもう、ないのです。

この記事は、京都のどこで器を見て、どこで買えるのかを、その成り立ちから順にたどります。

まず初めに、「京焼」と「清水焼」は、別のものではありません。経済産業大臣指定の伝統的工芸品としては「京焼・清水焼」という一体の名称で登録されています。清水焼は京焼に含まれる呼び名です。焼きものとしての中身は京焼・清水焼にまとめています。

京都には、焼きものの村がない

まず初めに、京都で陶土は採れません。信楽や有田のような粘土の鉱床が、この土地にはないのです。

だから京都の陶工は、土を他所から買ってきました。そして、注文されたものを何でもつくった。茶の湯の茶碗、公家の食器、寺の供物皿。土ではなく、作家の努力が産地をつくったのが京都です。

その結果、窯は一か所に固まりませんでした。注文主のいる場所の近くに、市内へ散らばったのです。とはいってもいくつかに窯場の集まるエリアはあります。

窯場 記録
粟田口 寛永年間に生産開始。京焼でも最も古い部類
八坂 1640年に存在を確認
清水 1643年までには存在を確認
御室・音羽・修学院ほか 御菩薩池、清閑寺なども京焼に含まれる

粟田口、八坂、音羽、御室。いまは地名としてしか残っていないものもあります。粟田口焼は1984年にいったん途絶え、1995年に窯が再興されました。

五条坂と茶わん坂

その散らばった窯場のなかで、最後に中心になったのが五条坂です。

場所は、東大路通の五条坂交差点から清水寺へ向かって清水道まで。清水寺の参道です。ここに清水六兵衛、高橋道八をはじめとする窯元が集まりました。

「清水焼」という名前は、この坂から来ています。焼きものの技法の名前ではなく、場所の名前です。

五条坂から清水寺へ上がる途中、南へ分かれるもう一本の坂が茶わん坂。名前のとおり、こちらも器の店が並ぶ道です。京都で「窯元のある坂」と言えば、この二本を指します。

五条坂には京都陶磁器会館があります。

京都の窯元の品を一か所で見られる公共の施設で、どこから回るか決めかねているなら、最初に寄る場所としていちばん確実です。開館日は変わることがあるので、訪問前に公式でご確認ください。

なぜ窯元は山科へ移ったのか

いま五条坂を歩いても、煙突は見つかりません。窯がないからです。

理由は煙でした。薪で焚く登り窯は、大量の煙を出します。市街地のまんなかで、それを続けることができなくなった。1960年代、窯元たちは東山を越えて、山科の丘へ移ります。

そこにつくられたのが清水焼団地です。京都市山科区。工房と窯元と問屋がまとまって入る、計画された一区画。京都でいま「窯のある場所」といえば、ここになります。

つまり京都の器は、名前の地(五条坂)と、つくる地(山科)が分かれているという、めずらしい状態にあります。買う場所を探すときにいちばん混乱するのが、この点です。

場所 何があるか 行き方
五条坂・茶わん坂 器の店、京都陶磁器会館。観光と一緒に回れる 京阪 清水五条駅、市バス 五条坂
清水焼団地(山科) 工房、窯元、問屋。つくっている現場 京都駅から市バス。会期中は臨時直通バス
市内の店 作家ものを扱う個人店が各所に。nokazeもそのひとつ 店によって異なる

いつ行くか

京都の器を買うなら、年に二度、値段も品数もまったく変わる時期があります。

催し 時期 場所
五条坂陶器まつり 毎年8月8日〜10日 五条坂(東大路通〜川端通)
清水焼の郷まつり 10月 清水焼団地(山科区)
それ以外の時期 通年 五条坂・茶わん坂の店、清水焼団地の直売

八月の五条坂は、坂そのものが市になります。京都の夏でいちばん暑い時期に、参道の両側に露店が並ぶ。日傘と水は必須です。

十月の清水焼団地は、つくっている場所がそのまま開く催しです。工房の人が自分の棚の前に立っているので、土のことも釉のことも、つくった本人に聞けます。この二つは、性格がまったく違います。

全国の日程は陶器市カレンダーに、当日の回り方は陶器市の歩き方にまとめています。

京都の器は、どこを見るのか

京都には決まった土も、決まった釉もありません。では何が「京都らしさ」なのか。絵付けです。

釉薬の上に色をのせて、低い温度でもう一度焼く。これが上絵付けです。手間のかかるこの技法が京都で磨かれたのは、それを買う客が京都にいたからでした。

  • 野々村仁清 1650年、赤色系の上絵付けを初めて成功させた陶工です。京焼の色は、ここから始まります。
  • 尾形乾山 仁清から直接技法を学びました。兄は画家の尾形光琳。絵と器が地続きだった京都を象徴する人です。
  • 奥田頴川 京焼として初めて磁器を焼きました。土のない土地が、石の器まで手に入れた瞬間です。
  • 仁阿弥道八 1800年代に活躍。高橋道八の家系で、五条坂の名を高めました。

もうひとつ、京都は楽焼を生んだ土地でもあります。轆轤を使わず手だけで成形する茶碗で、絵付けの華やかさとは正反対の方向です。この振れ幅の大きさが、京都という産地の性格です。

白磁の仕切り鉢に、藍で小さな実の文様を染付した器。脇に枯れた草花

選ぶときに見るところ

  • 絵の線を近くで見る 上絵付けは筆で描かれています。転写(プリント)は線の太さが均一で、筆は必ず入りと抜けがあります。ここが手描きかどうかの分かれ目です。
  • 裏を返す 高台と、銘があるかどうか。京都の器は作家名や窯名が入っていることが多く、誰がつくったのかを辿れます。
  • 同じ絵柄を二枚並べる 手描きなら、必ず少し違います。違いが見つからないときは、その理由を店の人に聞いてください。
  • 用途を先に決めておく 京都の器は種類がとにかく広い。「何に使うか」を決めずに歩くと、三時間歩いて何も買えずに終わります。

岡崎の店で、手に取る

ここまで五条坂と山科の話をしてきましたが、京都で器を見られる場所は、その二つだけではありません。市内には作家ものを扱う個人店が点在しています。

nokazeもその一軒です。場所は左京区の岡崎。平安神宮と京都市京セラ美術館のある一帯です。

nokazeの店先。濃い緑の扉のガラスにロゴが入り、外には桜、内には器の棚が見える

項目 内容
住所 〒606-8341 京都市左京区岡崎西天王町84-1
営業時間 木曜〜日曜・祝日 12:00〜17:00
電話 075-203-4917

五条坂の店が京焼・清水焼の産地の店であるのに対して、nokazeが並べているのは全国の作家ものです。笠間、信楽、多治見、常滑、沖縄のやちむん。京都の器も置いていますが、京都だけの店ではありません。

そして作家の名前から選べるようにしてあります。産地で選ぶのが京都の器の伝統的な買い方だとすれば、こちらは「誰がつくったか」から入る買い方です。この記事で挙げた見方——絵の線、裏の銘、同じ柄を二枚並べる——は、そのまま店の棚でも使えます。

月曜・火曜・水曜は休みです。開いているのは木曜から日曜と祝日の12:00〜17:00。京都観光の行程に組み込むときは、この曜日と時間だけ先に押さえておいてください。

店内のテーブルに並ぶ器。奥の壁には本を捧げる手を描いた壁画

購入した器の持ち帰り方

最後に、いちばん現実的な話を。

  • 買ったらその日の最後に 割れ物を持って観光地を歩くのは得策ではありません。器は行程の最後に回してください。
  • 配送を頼めるか先に聞く 五条坂・茶わん坂の店の多くは発送を受けています。荷物になるなら、最初にそれを確認してから選ぶほうが自由に選べます。
  • 手荷物にするなら緩衝材を 包んでもらっても、鞄の中で器同士が当たります。タオルを一枚持っていると安心です。
  • 飛行機なら機内持ち込み 預け入れの荷物は投げられます。大切な一点は手元に置いてください。

海外へ送る場合の注意は海外の方へ贈る日本の器に、オンラインで買う場合は和食器をオンラインで買う前ににまとめています。

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京都の器を知る

ほかの産地と比べる

買う前に

京都から、直接お届けします

nokazeは京都の店です。全国の作家がひとつずつ手でつくった器を、産地から直接お届けしています。作り手の名前がついているので、どんな人が作ったのかまで辿れます。

京都の器を見る

How to

  1. ステップ1:五条坂か、山科かを決める

    京都の器は、名前の地と、つくる地が分かれています。五条坂・茶わん坂は清水寺の参道で、器の店が並び、観光と一緒に回れます。山科の清水焼団地は窯元と工房が集まる生産の現場です。一日で両方を回るのは難しいので、どちらを見たいかを先に決めてください。
  2. ステップ2:京都陶磁器会館で全体を見る

    五条坂にある公共の施設で、京都の窯元の品を一か所で見られます。京都市東山区東大路五条上ル遊行前町583-1、10:00〜18:00、木曜休(祝日は営業)。個別の店を回る前にここで全体の幅を把握しておくと、自分がどの方向の器を探しているのかがはっきりします。
  3. ステップ3:絵の線と、裏の銘を確かめる

    京都の器の特徴は上絵付けです。転写は線の太さが均一ですが、筆で描いたものは必ず入りと抜けがあります。同じ絵柄を二枚並べて、違いがあるかどうかを見てください。そして裏を返し、高台と銘を確認します。京都の器は作家名や窯名が入っていることが多く、誰がつくったのかを辿れます。
  4. ステップ4:持ち帰り方を決めてから買う

    割れ物を持って観光地を歩くのは得策ではありません。器は行程の最後に回してください。荷物になりそうなら、選ぶ前に配送を受けてもらえるかを店に確認します。手荷物にするなら緩衝材を一枚。飛行機では預け入れにせず、機内に持ち込んでください。

FAQ

京焼・清水焼とは何ですか
京都で作られる焼き物の総称です。他の産地と違って固有の土を持たず、各地から土を取り寄せてきたのが特徴です。その分、土の性格ではなく、絵付けや造形の技術で発展しました。清水寺周辺で焼かれたものを特に清水焼と呼びます。
京都で器を買うなら、どこへ行けばいいですか
目的によって三つに分かれます。観光と一緒に回るなら五条坂と茶わん坂。窯元や工房の現場を見たいなら山科の清水焼団地。作家ものを落ち着いて選びたいなら市内に点在する個人店です。どこから回るか決めかねているなら、五条坂の京都陶磁器会館で京都の窯元の品を一度に見てから決めるのが確実です。
買った器は送ってもらえますか
五条坂・茶わん坂の店の多くは発送を受けています。ただし店によって条件が違うので、選ぶ前に配送の可否を聞いておくと、荷物を気にせず選べます。手荷物で持ち帰る場合は、包装があっても鞄の中で器同士が当たるため、タオルなどの緩衝材があると安心です。飛行機なら預けずに機内へ持ち込んでください。

この記事の器を買う

日本の器をはじめから知りたい方へ。歴史、陶器と磁器の違い、素材、手入れまでを一本にまとめています。→ 日本の器・完全ガイド|はじめての一枚から歴史まで

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