上絵付けとは|釉薬の上に描く、色が自由な技法

上絵付け(うわえつけ)とは、本焼きを終えてつるつるになった釉面の「上」に、低温で溶ける絵具で描き、700〜800℃の上絵窯で再度焼き付ける技法です。
高温では燃え尽きてしまう繊細な絵具が使えるため、赤・黄・緑・紫・金・銀まで、色の自由度が圧倒的に高いのが特徴です。九谷焼・京焼・清水焼・伊万里焼の華やかな色絵は、すべてこの技法によります。
釉薬の下に描く下絵付けと対をなす技法で、両者の違いは「絵が釉の下に沈んでいるか、上に乗っているか」の一点に尽きます。
三度目の火
上絵付けの器は、少なくとも三度窯に入ります。素焼きが一度目、釉薬をガラス化させる本焼きが二度目、そして上絵を焼き付ける上絵窯が三度目です。
三度目の火が低温である理由は、色にあります。赤・黄・紫といった発色は、1,300℃の高温では飛んでしまう。700〜800℃という低い温度でなら、これらの色は残ります。その代わり、絵具は釉薬に溶け込まず、表面に乗った状態で固まります。
指でなぞるとわずかな凹凸を感じるのは、そのためです。この「乗っている」構造が、上絵付けの色の鮮やかさと、摩擦への弱さの両方を生んでいます。
上絵付けの主な種類
- 五彩・色絵 赤・黄・緑・紫・紺青などのガラス質の和絵具を厚めに盛り上げる技法。九谷焼や古伊万里、柿右衛門様式が代表で、艶やかな立体感が生まれます。
- 金彩・銀彩 本金や本銀を含んだ液で描き、焼き付ける技法。絢爛な輝きを放ち、祝いの器や茶道具に多く用いられます。
- 赤絵 赤を主調とした絵付け。線描の細やかさと濃淡で、力強さや雅さを表現します。
- 金襴手(きんらんで) 染付の上に色絵と金彩を重ねる、もっとも豪華な様式。欧州の宮廷文化で重宝されました。
長く使うために
| 扱い | 上絵付け | 理由 |
|---|---|---|
| 食洗機 | 避ける | 高温高圧の水流で絵具が退色する |
| 電子レンジ | 金彩・銀彩は不可 | 金属を含むため火花が出る |
| 洗い方 | 柔らかいスポンジと中性洗剤 | 研磨剤入りや金属たわしは絵具を削る |
| カトラリー | 器の上で滑らせない | 金属が擦れると金彩が最初に摩耗する |
難しく聞こえますが、要点は一つです。表面に絵具が乗っているのだから、こすらない。それだけを守れば、何十年でも色は保たれます。
関連記事・用語
関連する用語
- 下絵付けとは|釉の下だから、色が落ちない
- 赤絵とは|釉の上に描く、九谷と有田の赤
- 五彩・五彩手とは|九谷を決定づけた5つの色
- 古九谷とは|わずか50年で消えた幻の磁器
- 染付とは|藍と白の磁器はどう生まれるか
- やきもの用語集|技法・産地・道具のことば
くわしく知る
釉の上に乗った色を見る
指でなぞるとわずかに感じる、絵具の厚み。Nokazeでは上絵付けの器を、描いた作り手とともにご紹介しています。
絵付けの器を見るFAQ
上絵付けと下絵付けの決定的な違いは何ですか?
上絵付けにはどのような技法がありますか?
上絵付けの色が薄くなってきました。直せますか?
この記事の器を買う
日本の器をはじめから知りたい方へ。歴史、陶器と磁器の違い、素材、手入れまでを一本にまとめています。→ 日本の器・完全ガイド|はじめての一枚から歴史まで