陶器の手入れ|磁器と何が違い、何をすればいいのか

粉引の縁のクローズアップ。白い化粧土の下から赤茶の土が抜け、縁に沿って線を描いている

陶器と磁器で手入れが変わるのは、水を吸うか、吸わないか。違いはこの一点だけです。

磁器は1,300度で素地の内部までガラス質に変わるので、水を通しません。洗ってしまうだけで済みます。陶器は粘土を1,100〜1,250度で焼くため、素地に細かい隙間が残ります。そこへ水が入る。だから手入れが要ります。

覚えることは多くありません。この記事では使い始め・毎日の洗い方・乾かし方・トラブル対処の4つに絞ってまとめます。

素材そのものの違いは陶器と磁器の違いに、磁器の性質は磁器とはにまとめています。

水を吸う、という一点がすべてを決める

陶器の素地には、目に見えない隙間があります。ここへ水が入ると、次の3つが起きます。

  • 色が入る 醤油や茶が隙間へ染み込み、少しずつ色が濃くなります
  • 匂いが残る 油や出汁の匂いが抜けにくくなります
  • 乾かないとカビる 水を含んだまま仕舞うと、内側から黒い点が出ます

1つ目は経年美化として歓迎されるものです。

経年美化(けいねんびか)とは、使い込み・経年変化によって器が美しさを増していく、という考え方です。

消耗・劣化と捉える西洋の概念とは対照的に、育ちを美徳とする日本独自の価値観です。買った日がいちばん美しい器ではなく、使うほど美しくなる器。器を育てるという言葉は、この考え方から生まれています。

1つ目は美しさとして取り扱うのが日本の文化ですが、2つ目と3つ目に対しては対策が必要です。ただ、対応は至ってシンプルです。

使い始めに、一度だけ

買ってきた器は、最初に目止めをします。でんぷんで隙間を埋める作業で、これをしておくと染みも匂いも入りにくくなります。

  • ① 鍋に器と米のとぎ汁、小麦粉を溶かした水を入れる 器が完全に浸かる量。とぎ汁がなければ、水に大さじ2ほどの小麦粉か片栗粉でも代用できます
  • ② 弱火で20分ほど煮る 沸騰させると器がぶつかって欠けるので、ふつふつする程度を保ちます
  • ③ 火を止めて、そのまま冷ます 急に取り出すと温度差で割れます。鍋の中で自然に冷めるまで待ちます
  • ④ 洗って、完全に乾かす ここまでが一続きです

目止めが要るのは粉引・焼締・貫入の入った器です。磁器には必要ありません。迷ったら裏の高台を見て、素地が白く緻密なら磁器、赤茶や灰色なら陶器と判断してください。

毎日の洗い方

ぬるま湯とやわらかいスポンジ。基本はそれだけです。

陶器 磁器
洗剤 控えめに。素地が吸います ふつうに使えます
食洗機 避けるのが無難 使えます
つけ置き 長時間はしない 問題ありません
たわし 金属たわしは不可 金彩がなければ可

洗剤を控える理由は、素地が洗剤を吸うからです。吸った洗剤は次に料理を盛ったときに匂いとして出てきます。油汚れがひどいときだけ使い、あとはお湯でこすれば足ります。

使う前に器を水にくぐらせておくと、汚れが入りにくくなります。乾いた素地は水を吸うので、先に水で満たしておけば醤油や油の入る余地がなくなる、という理屈です。

乾かし方で、ほぼ決まります

陶器の手入れでいちばん大事なのはここです。洗った直後の器は、見た目が乾いていても素地の中に水を含んでいます。

  • 布巾で拭く 表面の水を取ります。これだけでは終わりません
  • 風通しのよいところに一晩置く 裏返して、高台を上にして置くのが確実です
  • それから仕舞う 重ねるのは完全に乾いてから

急ぐときは、器を伏せて数分ほど陰干しするだけでもかなり違います。「洗ったらすぐ棚へ」をやめるだけで、カビはほぼ起きません。

シミ・匂い・カビが出たら

症状 対処
茶色いシミ まず目止めをやり直します。それでも気になる場合のみ、酸素系漂白剤をぬるま湯に薄めて短時間。塩素系は使いません
匂いが残る 水を張って一晩置き、翌日に煮沸。洗剤の吸い込みが原因のことが多いです
黒い点(カビ) 酸素系漂白剤を薄めて浸け、よくすすいで完全に乾かします。以後は乾燥を徹底
細かい線が入った これは貫入で、割れではありません。対処は不要です
焦げついた 水を張って一晩置くと浮きます。削り取らないでください

漂白剤は最後の手段です。陶器は素地が漂白剤も吸います。使ったあとは必ず水を替えて数回すすぎ、しっかり乾かしてください。

やらないほうがいいこと

  • 濡れたまま重ねて仕舞う カビの最大の原因です
  • 長時間のつけ置き 素地が水を吸いすぎます
  • 熱い器に冷水 急な温度差で割れます。これは磁器も同じです
  • 金属たわし・研磨剤 釉の表面に傷が入り、そこから汚れが入ります
  • 電子レンジで金彩・銀彩 金属なので火花が出ます

手入れは、育てることでもある

陶器は使うほど色が落ち着き、艶が出ます。粉引なら白がやわらかい生成りへ、焼締なら土の色が深くへ。この変化は汚れではなく、その器を使った時間そのものです。

何が起きているのかは器を育てるとはに、その変化を指す言葉は経年美化にまとめました。手入れは、変わらないようにする作業ではありません。きれいに変わっていくようにする作業です。

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手入れといっても、洗って乾かすだけです。使うほど色が落ち着いていく器を、産地の作り手から直接お届けします。

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How to

  1. 使う前に水にくぐらせる

    30秒ほど水に浸すか、さっと水を通します。乾いた素地は水を吸うため、先に水で満たしておけば醤油や油が入る余地がなくなります。粉引や焼締など、色の入りやすい器ほど効きます。
  2. ぬるま湯とやわらかいスポンジで洗う

    洗剤は油汚れがひどいときだけ、控えめに。素地が洗剤を吸い、次に盛った料理へ匂いとして出ます。金属たわしと研磨剤は使いません。釉に傷が入り、そこから汚れが入ります。長時間のつけ置きも避けてください。
  3. 布巾で拭き、伏せて一晩置く

    見た目が乾いていても、素地の中には水が残っています。高台を上にして伏せ、風通しのよいところに一晩置きます。急ぐときでも、伏せて数分の陰干しで差が出ます。
  4. 完全に乾いてから重ねて仕舞う

    濡れたまま重ねて仕舞うのが、黒い点(カビ)の最大の原因です。乾ききってから棚へ入れてください。重ねるときは、間に布をはさむと釉の擦れを防げます。

FAQ

陶器にシミを作らないためには、どう手入れすればよいですか
使う前に30秒ほど水にくぐらせ、使ったらぬるま湯で早めに洗い、伏せて一晩乾かしてから仕舞う。この3つでほぼ防げます。陶器は1,100〜1,250℃で焼くため素地に隙間が残り、そこへ醤油や茶が入ります(磁器は1,300℃で素地までガラス化するため吸いません)。洗剤は素地が吸うので控えめに。買った直後に目止めをしておくと、さらに入りにくくなります。
なぜ陶器は磁器と手入れが違うのですか
素地が水を吸うかどうかだけの違いです。磁器は1300度で素地の奥までガラス化するため水を通しません。陶器は1100〜1250度で焼くため素地に細かい隙間が残り、そこに水が入ります。目止め・日々の洗い方・乾かし方の三つを押さえれば十分です。
陶器は食洗機に入れてもよいですか
避けるのが無難です。陶器の素地には隙間があり、食洗機の高温・高圧と強い洗剤で水や洗剤を吸い込みやすくなります。吸った洗剤は次に料理を盛ったときに匂いとして出てくることがあります。ぬるま湯とやわらかいスポンジで手洗いしてください。磁器は食洗機で問題ありません。
目止めはどの器に必要ですか
水を吸う陶器に必要です。具体的には粉引、焼締、貫入の入った器。磁器は水を吸わないので不要です。迷ったら器を裏返して高台を見てください。釉が拭き取られて素地が出ている部分が白く緻密なら磁器、赤茶や灰色なら陶器です。
陶器にカビが生えてしまいました
酸素系漂白剤をぬるま湯に薄めて浸け、よくすすいでから完全に乾かしてください。塩素系は使わないでください。原因はほぼ例外なく、水を含んだまま仕舞ったことです。洗ったあとは風通しのよいところに一晩、高台を上にして置いてから仕舞うと、再発しません。

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日本の器をはじめから知りたい方へ。歴史、陶器と磁器の違い、素材、手入れまでを一本にまとめています。→ 日本の器・完全ガイド|はじめての一枚から歴史まで

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