作家 川澄智一|アンティークからファントムまで、個性のある独特の作品

棚に並んだ川澄智一氏の器を遠目に見ると、陶器ではなく金属や木に見えます。
アンティークのような金属調の艶。木の年輪。引き裂かれた樹皮。しまうまの縞。そして、のぞき込むと銀河が沈んでいるような青。どれも土でできています。
川澄氏の仕事は、シリーズごとに完全に違う顔をしています。同じ作り手のものだと言われて驚く人がいるほどです。ここでは5つのシリーズを、それぞれ何をどう作っているのかから見ていきます。
川澄氏の器はコレクションにまとめています。シリーズによって値段も表情もまったく違うので、まず全体を見比べてみてください。
笠間で、先人の意志を受け継ぐ
工房は茨城県笠間市にあります。本人はこう書いています。
「先人の意志を受け継ぎ、多くの方に感動と刺激を与えられるような作品を目指して大好きな陶芸をしています」。
この短い一文に、笠間という産地の性格がそのまま出ています。笠間焼には「これが笠間焼だ」という決まった様式がありません。江戸時代から続く産地でありながら、様式で縛らなかったことが、結果として多様な作り手を呼び込みました。
だから笠間では「受け継ぐ」と「新しくする」が矛盾しません。受け継ぐのは技術と姿勢であって、見た目ではない。5つのシリーズがこれだけ違うのに、どれも笠間の器として成り立っているのはこのためです。
5つのシリーズ
先に全体を並べます。
| シリーズ | 見た目 | つくり方の核 |
|---|---|---|
| アンティーク | 錆びた金属、古びたブロンズ | 独自に追求した金属釉 |
| Wood | 丸太の年輪、乾いた割れ | 土の面を彫り下げる |
| ロックバーク/サンドバーク | 引き裂かれた樹皮、岩肌 | 割れ目の技法 |
| ゼブラ | 白と黒のシマウマのイメージ | バーナーで炙って土を崩す |
| ファントム | 青や緑と黒の、星雲のような宇宙の揺らぎ | 長年かけて完成させた釉 |
アンティーク|土から生まれる金属調
川澄氏が笠間で独自に追求してきたのが、金属釉です。暗い茶褐色の地に、光の当たる角度でブロンズのような艶が走る。手に取るまで鋳物か何かだと思う人がいます。
けれど持てば軽く、口をつければ土の温度があります。金属に見えて、土である。これが川澄智一氏の器のいちばん強い部分です。
代表的なのが花器です。工業製品のパーツを思わせる細身のかたちに、錆びたボルトのような「スクリュー」が突起としてついています。荒々しく焼き締めたベースが大地の質感をそのまま閉じ込め、首のあたりを深いブロンズ調の釉が流れる。無機と有機が交差する姿は、器というよりオブジェに近い佇まいです。
この艶は釉薬に含まれる鉄分が、窯の中の炎の状態によって表情を変え、金属質の光として表面に出てくることで生まれます。
Wood|年輪を彫った丸太のような作品
名前のとおり、丸太を輪切りにした断面が彫られています。
中心から外へ、同心円が幾重にも走る。その円を横切るように、放射状の短い線が刻まれている。木の年輪と、乾いて入った割れ。それを土の上に彫り出しています。
縁は垂直に立ち上がった直線で、そこだけ濃く艶が乗ります。中央の彫りはマットに沈み、立ち上がった縁は光る。一枚の中に、二つの表情が同居しています。
年輪は一枚ずつ違います。同じ「wood plate(大)」でも、円の間隔も割れの入り方も同じものはありません。土の質感とは思えない見た目でありながら、木のように個体差がある。そこが選ぶときの面白さです。
彫りで模様を出す技法という意味ではしのぎと近い発想ですが、しのぎが稜線を立てるのに対して、こちらは面を彫り下げています。

ロックバーク/サンドバーク|岩のように引き裂かれた表面を持つ器
「割れ目の技法」で作られるシリーズです。名前は2つの言葉でできています。
- サンド 笠間粘土が見せる、土の生地そのものの色。それを大地にたとえています
- バーク 木目調の模様が引き裂かれる、という意味。樹皮のことです
つまりサンドバークは「大地の色をした、引き裂かれた樹皮」。ロックバークは、そこに岩肌の側面が加わります。土の色を活かすので、金属釉のアンティークとは対極の、素朴であたたかい肌合いになります。
マグカップで見ると分かりやすい。茶色い地に走る割れ目が、一つずつまったく違う形で入っています。割れ目は狙って同じ場所には入りません。土が乾く速さも、力のかかり方も毎回違うからです。

ゼブラ|白と黒のコントラストがシマウマのような作品
5つの中でいちばん作り方が変わっています。
土に模様をつけたあと、バーナーで炙ります。すると土が膨張して、表面が自然に崩れ落ちる。その上から白い釉薬をかけると、崩れた凹凸に釉が溜まり、白と黒のコントラストが出ます。
この白黒がしまうまの模様に似ているので、ZEBRA(ZB)と名づけられました。
炎をどう当てるか、どこがどれだけ崩れるかは、完全にはコントロールできません。だからこのシリーズは、作り手にも仕上がりが読めない部分がいちばん大きい。一点ものという言葉が、いちばん文字通りに当てはまるシリーズです。

ファントム|青の中に沈む銀河のイメージ作品
川澄氏が長年かけて研究し、ついに完成させたという理想の青があります。それを使うのがファントムです。
青と黒が織りなす表情は、まるで宇宙の星雲や銀河をのぞき込んでいるよう。青の濃淡が器の奥行きに沿って揺らぎ、見る角度や光によって表情を変えます。緑と黒の組み合わせもあり、こちらは深い森のような色合いになります。
静かなのに、目が離せない。日々の食卓に、一瞬だけ宇宙が入り込んだような存在感をもたらします。

なぜ一点ずつ違うのか
「一点もの」という言葉はよく使われますが、川澄氏の場合、違いが生まれる理由がシリーズごとにはっきりしています。
| シリーズ | 違いが生まれる場所 |
|---|---|
| アンティーク | 窯の中の置き場所、温度の上がり方、炎の回り方。ブロンズ寄りに出るものと、黒に近く沈むものが生まれる |
| Wood | 彫りは手作業。年輪の間隔も、割れの走り方も一枚ずつ違う |
| ロックバーク/サンドバーク | 割れ目は狙った場所には入らない。土の乾き方と力のかかり方で決まる |
| ゼブラ | 炙って崩す工程そのものが偶然に開かれている。作り手にも読めない |
| ファントム | 青の濃淡が奥行きに沿って揺らぐ。同じ釉でも溜まり方が変わる |
器種と、暮らしの中での使い方
器種の幅の広さも、この作り手の特徴です。
| 器種 | 特徴 | 使う場面 |
|---|---|---|
| プレート | 年輪を彫ったもの、リムが立つもの。大小あり | 主菜、取り皿、パン |
| 浅鉢 | ろくろ目を残した浅い器。縁が立つ | 汁気のある料理、サラダ |
| マグカップ | 割れ目の肌合い。手に持つと軽い | 毎朝の一杯 |
| 花器 | 細身の形に金属釉。穴が空いたものもある | 一輪挿し、枝もの |
| 振出(ふりだし) | 小さな菓子を入れる茶道具 | 煎茶の席、金平糖入れ |
日常の器を作りながら、茶の道具まで手が伸びている。器種の幅は、その人がどれだけ器を見てきたかの証拠でもあります。
見た目から扱いにくそうに思われることがありますが、実際は逆です。
| 項目 | 可否 |
|---|---|
| 電子レンジ | 使えます |
| 食洗機 | 使えます |
| オーブン | 条件つき。急な温度変化は避けてください |
毎日使える器です。釉薬がしっかりかかっているので目止めも要りません。手入れの基本は和食器の手入れにまとめています。
盛るものは、シリーズで変わります。アンティークとファントムは色が濃いので、白身魚・豆腐・卵・クリーム系のパスタなど、白いものと明るいものがよく映えます。逆に煮物のような茶系は沈んで見えることがあります。サンドバークは土の色なので、和洋どちらの料理も受けます。
酒器なら、ぐい呑みの内側の色が酒に映り込みます。花器は一輪挿しとして、枝ものを一本だけ入れるのが似合います。
川澄氏の器は一点ものです。同じ器種が再入荷することはあっても、まったく同じ一枚は二度と並びません。気になったものがあれば、その時に決めるのが正解です。川澄 智一コレクションで見比べて確認してください。
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金属に見えて、手に取れば土である。年輪も、割れ目も、しまうまの縞も、青の奥行きも、一点ずつ違います。5つのシリーズから、あなたの一点を。笠間から、そのままお届けします。
川澄 智一の器を見るFAQ
川澄智一の器は電子レンジや食洗機で使えますか?
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何点か買っても食卓でまとまって見えますか?
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