金彩とは|釉の上に金を焼き付ける、器の装飾

金彩(きんさい)とは、本焼きを終えた器の釉の上に、金を含む絵具で描き、低い温度でもう一度焼き付ける装飾です。器の縁をぐるりと一周する金の線も、文様の輪郭をなぞる細い金も、ほとんどがこの方法でつくられています。
金彩は上絵付けの一つです。上絵付けは「釉の上に描いて焼き付ける」という工程の名前で、そのうち金を使うものを金彩と呼びます。金彩を器いっぱいに使った豪華な様式が金襴手です。
もう一つ、名前がよく似たものに金継ぎがあります。こちらは割れた器を漆で接ぎ、最後に金粉を蒔く修理で、窯には入れません。同じ「器の上の金」でも、焼き付けたものか、漆で留めたものかで、扱い方まで変わります。
金と対になるのが銀の装飾です。金は時間が経っても色が変わりませんが、銀は空気中の硫黄と結びついて黒く沈んでいきます。同じ上絵付けでも、時間に対する強さがまったく違います。
金彩・金襴手・金継ぎの違い
器の上に金が見えるとき、それが何なのかは次のように見分けます。
| 呼び名 | 何のことか | 金の留め方 |
|---|---|---|
| 上絵付け | 釉の上に描いて焼き付ける工程の総称 | 色の絵具も金も、低温の窯で焼き付ける |
| 金彩 | 上絵付けのうち、金で描く装飾 | 釉の上に焼き付ける |
| 金襴手 | 赤絵などの上に金彩を重ねた、豪華な様式 | 金彩と同じ。最後に金だけを焼く |
| 金継ぎ | 割れや欠けを直す修理 | 漆で接ぎ、金粉を蒔く。焼かない |
金継ぎの仕上げに使う金の粉は、漆で器に留めるためのもので、窯で焼くことはできません。金彩の絵具は、窯の熱で釉の表面に焼き付くようにつくられています。見た目は同じ金でも、窯を通ったかどうかで別のものになると覚えておくと迷いません。
金色に見えても、金彩ではない器
黒や茶の地に、金属のような鈍い光が浮かぶ器があります。多くは金彩ではなく、金属を多く含む釉薬を焼いて、金属のような質感を出したものです。金そのものは使われていません。
見分け方は、光っている部分の広がり方です。金彩は文様として描いたり貼ったりするので、光る部分に線や輪郭があります。釉で出した金属の色は、器全体にまだらに広がり、境目がにじんでいます。
金を器に焼き付ける三つの方法
金彩に使う金には、おおむね三つの形があります。
- 金液 金を溶かして液状にした絵具。焼くと磨かなくても鏡のように光る。縁の金線に多い
- 磨き金 金液に金の粉を加えたもの。焼き上がりはくもっていて、砂や瑪瑙で磨くと落ち着いた金色が現れる
- 金箔 金を薄く打ち延ばした箔を、文様の形に切って器に置く。絵付けには、燃えてしまわないよう厚い箔を使う
焼き付ける温度は、器の本焼きの温度で決まります。金液の製造元が示す目安では、1,300℃を超えて本焼きした磁器なら800℃前後、1,200℃台で焼いた陶器などなら700〜750℃です。器が本焼きで耐えた温度より、ずっと低いところで金だけを定着させます。
金は他の上絵具より低い温度で焼くため、赤や緑を焼いたあと、最後に金だけで窯に入れることが多い技法です。窯に入る回数が増えるほど、手間と割れの危険も増えます。
金を釉の下に閉じこめる「釉裏金彩」
金彩はふつう釉の上に載っていますが、その順番を逆にした技法があります。釉裏金彩(ゆうりきんさい)です。
石川県小松市の吉田美統氏は、九谷焼の赤絵金襴手を得意とする窯元に生まれ、家業で上絵付けと金襴手を深めたのち、釉裏金彩に取り組みました。色の釉で地色をつくって焼き、そこに文様の形に切った金箔を置いて焼き付け、さらに全面に透明釉をかけて焼き上げます。2001年7月12日、釉裏金彩の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。
金箔が透明釉の膜の下にあるので、金は表面に出ていません。釉を一枚通して見る金は、上に載った金彩より柔らかく、沈んだ光になります。
金彩の見どころ
- 光り方 金液の鏡のような光か、磨き金の落ち着いた光か。同じ金でも印象がまったく違う
- 線の揺れ 手描きの金線は、筆の入りと抜きで太さがわずかに揺れる。線幅が均一なら転写のことが多い
- 地との対比 白い磁器の上では華やかに、黒や藍の地の上では引き締まって見える
日本では、有田焼や九谷焼、京焼・清水焼の色絵で、金彩が仕上げの一筆として使われてきました。藍の染付に色と金を重ねる染錦も、その一つです。
金彩の器を使う
金は空気や水、硫黄に侵されにくい金属で、時間が経っても黒ずみません。ただし、釉の上に載っているのはごく薄い金の膜です。変色はしなくても、こすれればすり減ります。
- 電子レンジは使わない 金は金属なので火花が出て、金も器も傷む
- 食洗機は避ける 高温の水流と強い洗剤で、金が薄くなっていく
- 研磨剤と金属たわしを使わない 柔らかいスポンジと中性洗剤で手洗いする
- 金属のカトラリーを滑らせない 金がいちばん早く減るのは、フォークやナイフが当たるところ
釉裏金彩のように金が釉の下にある器は、表面の金ほどこすれを気にしなくて済みます。それでも金属であることは同じなので、電子レンジは使えません。日々の扱いは和食器の手入れにまとめています。
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技法の面白さは、手に取るといちばん早い
金彩に限らず、器の技法は写真では半分しか伝わりません。金の線が光る角度、釉の溜まりの深さ、土の手触り。どれも手に持って初めてわかります。Nokaze には日本各地の作家が、それぞれの技法で仕上げた器が届いています。まずは新しく入った器から、気になった一点を手に取ってみてください。
新入荷の器を見るFAQ
金彩と金継ぎはどう違いますか。
金彩の器は電子レンジに使えますか。
金彩の金は変色しますか。
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