土鍋の選び方|号数・釉・使い始めから手入れまで

天目の五合炊きごはん鍋から、しゃもじで炊きたてのご飯をよそう。底は無釉の土のまま

土鍋は、火から下ろしたあとも一分ほど、まだ静かに炊けています。

厚い土は温まるのに時間がかかり、そのぶん冷めるのにも時間がかかります。この鈍さが、米の甘みを引き出し、煮汁を澄ませ、食卓に出してからも料理を温かいまま保ちます。金属鍋の速さでは届かないところに、土鍋は届きます。

この記事では、号数・用途・素材・釉の四つから土鍋の選び方を整理し、使い始めの目止めから、火加減、洗い方、ひびが入ったときの対処までをまとめます。

Nokazeが扱う土鍋は土鍋にまとめています。作り手と釉の違いを写真で見比べてみてください。

まず号数。人数で決まる

土鍋のサイズは「号」で表します。1号がおよそ3cmで、号数はほぼ直径の目安になります。

号数 直径の目安 人数
6号 約18cm 1人。一人鍋、雑炊、湯豆腐
7号 約21cm 1〜2人。いちばん使い回しがきく
8号 約24cm 2〜3人。家庭の標準
9号 約27cm 3〜4人
10号 約30cm 4〜5人。来客用

迷ったら人数より一つ大きめを選んでください。土鍋は八分目までしか入れられないので、ぴったりのサイズを選ぶと具が入りきりません。二人暮らしなら8号がちょうどよく、来客のある日にも対応できます。

ごはん鍋と、鍋料理用は別のもの

同じ土鍋でも、ごはんを炊く鍋と鍋料理をする鍋は形が違います。

  • ごはん鍋 深さがあり、蓋が重い。中で対流が起きるように丸みを帯びています。サイズは号ではなく合で表し、五合炊きで米約750g、四〜六人分です
  • 鍋料理用 浅く広い。具を並べやすく、取り分けやすい。蓋は軽めで、湯気を逃がす穴があります

ごはん鍋の蓋が重いのは、内部の圧力を少し上げるためです。炊いているあいだ蓋を開けないのは、この圧力を逃がさないため。開けるのは最後の一度だけで、そのときの湯気が、それから一時間の部屋の匂いを決めます。

織部の土鍋で炊いたさつまいもご飯。蓋をずらして、しゃもじで混ぜているところ

土は、普通の陶土ではない

直火にかけられる土鍋は、耐熱用に配合された土でできています。

鍵になるのがペタライト(葉長石)です。熱で膨張しにくい鉱物で、これを土に混ぜることで急な加熱にも割れにくくなります。三重県の美濃に近い四日市の萬古焼が土鍋の産地として知られているのは、この配合を早くから確立したためです。

信楽もまた土鍋の産地です。信楽焼の粗い土は、もともと火に強い性質を持っています。粗さは手ざわりだけの話で、焼き締まった土は水を通しません。

陶器そのものの性質は陶器と磁器の違いに、土の焼き締まり方は焼き締めにまとめています。

カネフサ製陶 ― 信楽で、土鍋だけをつくる

Nokazeが扱う土鍋は、滋賀県信楽町のカネフサ製陶がつくっています。

この工房は土鍋とごはん鍋だけ、つまり耐熱の器だけを専門に製造しています。皿もマグもつくらず、火にかける器だけを続けている。だから土の配合も、蓋の重さも、蓄熱のさせ方も、炊くことを起点に決まっています。

並んでいるのはすべて五合炊きのごはん鍋です。米約750g、四〜六人分。二人暮らしなら二合を炊いて、余りを翌朝のおにぎりに回せる大きさです。蓋は厚く重く、炊いているあいだ内側の圧力を逃がしません。

いま並んでいる釉と在庫は土鍋で確認できます。工房そのものについてはカネフサ製陶のページへ。

釉は六種類あります。同じ形の同じ五合炊きでも、釉が変わると食卓での顔がまるで違います。次の節で見比べてください。

織部の緑釉がかかった土鍋の蓋のつまみと蒸気穴。釉が流れたところに濃淡が出ている

釉で選ぶ ― 六つの色

土鍋にかかる釉は、日本の作り手が四百年のあいだ磨いてきたものです。食卓に出す鍋なので、色は最後まで見えています。

釉 見え方 合う料理
志野 厚くかかった白い長石釉。薄いところが緋色に発色する 白飯、湯豆腐。中身が明るく見える
天目 深い黒。光を吸って落ち着く 鍋料理全般。湯気と具の色が立つ
黄瀬戸 あぶらげ肌の黄色。胆礬の緑が滲む 根菜、きのこ。茶色い煮物が沈まない
織部 銅が出す深い緑。流れたところで濃淡が生まれる 青菜、白身。食卓に一点だけ色が入る
飴 鉄釉の飴色。厚みのあるところは黒に近づく 煮込み、すき焼き。木のテーブルになじむ
瑠璃 コバルトの深い青。艶が強く、光をよく返す 白飯。炊き上がりの白がいちばん映える

底は釉をかけずに土のままにしてあります。火に当たる面なので、ここに釉があると熱で剥がれるためです。裏返すと素地の色がそのまま見えます。

白飯を炊くのが主なら志野か瑠璃、鍋料理まで使うなら天目か飴。迷ったら天目です。どの料理でも中身の色が立ちます。実物の写真は土鍋で見比べられます。

使い始めに、目止めをする

買ってすぐ火にかける前に、目止めをしておきます。土の細かい隙間をでんぷんで埋める作業で、水漏れと匂い移りを防ぎます。

  • ① 洗って、よく乾かす 外側と底を完全に乾かします。ここが濡れていると火にかけたとき割れます
  • ② おかゆを炊く 八分目まで水を入れ、ご飯を茶碗一杯分ほど加えて弱火で一時間ほど。米のとぎ汁でも代用できます
  • ③ そのまま冷ます 火を止めて自然に冷めるまで置き、洗って完全に乾かします

ごはん鍋は最初に一度炊けば、それが目止めを兼ねます。一年ほど使わなかったあとに出すときも、もう一度やっておくと安心です。

火にかけるときの四つ

土鍋を長く使うかどうかは、ほとんどここで決まります。

  • 底を乾かしてから火にかける 濡れた底に火が当たると、水分が急に膨張して割れます。布巾で拭くだけで十分です
  • 空焚きをしない 中身のない状態で加熱すると、土が耐えられません。火をつける前に必ず中を確認します
  • 弱火から始める 厚い土はゆっくり温まります。最初から強火にせず、中火までで足ります
  • 熱いうちに水をかけない 急に冷やすと割れます。使い終わったら少し冷ましてから洗ってください

IHは、底に発熱体を組み込んだ対応品を除いて使えません。直火とオーブンが土鍋の場所です。電子レンジは、料理を温め直す程度なら差し支えありません。

洗い方と、しまい方

使い終わったらぬるま湯で洗い、完全に乾かしてから仕舞います。土鍋の管理でいちばん大事なのはこの一点です。

土は水を含むので、乾ききらないまま箱に入れるとカビます。洗ったあと風通しのよいところに一晩、底を上にして置いておくのが確実です。急ぐときは、空の状態で弱火に数十秒かけて水気を飛ばす方法もあります。

洗剤は控えめに。土が洗剤を吸うと、次に炊いたときに匂いが出ることがあります。焦げついたら、水を張って一晩置けばたいてい浮きます。和食器の手入れに、器全般の扱い方をまとめています。

ひびが入ったら

使ううちに釉の表面へ細かい線が入ってきます。これは貫入で、割れではありません。使い込んだ土鍋にはたいてい入っています。

水漏れが出るような深いひびは、おかゆを炊くと塞がることがあります。目止めと同じ原理で、でんぷんが隙間に入って固まるためです。一度で駄目なら二度。それでも漏れるなら、土鍋としての役目は終わりですが、そこまで使えばよく働いた鍋です。

器が時間とともに変わっていく仕組みは器を育てるとはに書きました。経年美化という言葉は、土鍋にもそのまま当てはまります。

欧米の食卓で土鍋を使う

土鍋は和食のための器だと思われがちですが、直火にかけてそのままテーブルへ出せる厚手の鍋だと考えると、使い道はずっと広がります。

  • キャセロールとして オーブンに入れられます。グラタン、ラザニア、ローストした根菜。厚い土がゆっくり火を通すので、縁が焦げる前に中まで火が入ります
  • 煮込みに ポトフ、シチュー、カスレ。蓋が重く水分が逃げにくいので、少ない水でも肉がやわらかくなります
  • パンとスープの一皿に オニオングラタンスープをそのまま食卓へ。冷めるのが遅いので、最後の一口まで熱いままです
  • 米以外の穀物に リゾット、パエリア、クスクス。五合炊きは直径24cmほどで、四人分のパエリアがちょうど収まります

ダッチオーブンとの違いは重さと、テーブルに置いたときの見え方です。鋳鉄は蓄熱に優れますが重く、食卓では道具の顔をしています。土鍋は同じ働きをしながら、置いた瞬間に器になります。志野や織部の釉は、木のテーブルにもリネンのクロスにも合います。

気をつけたいのは三つだけです。IHは対応品を除いて使えません(欧米の電磁調理器も同じです)。底が濡れたまま火にかけないこと。そしてオーブンから出したあと、濡れた台や大理石の上に直接置かないこと。急な温度差が土鍋の唯一の弱点です。ガス、電気コイル、オーブンなら問題ありません。

洗い方は変わりません。ぬるま湯で洗って、完全に乾かしてから仕舞う。食洗機には入れず、手で洗ってください。

はじめの一つをどう選ぶか

整理するとこうなります。

  • 号数 人数より一つ大きめ。二人暮らしなら8号
  • 用途 ごはんなら深いごはん鍋、鍋料理なら浅く広いもの
  • 釉 中身を明るく見せたいなら志野、料理を選ばないなら天目
  • 重さ 持ち上げて食卓へ運ぶので、蓋を含めた重さを確認しておく

土鍋は、買った日から十年単位で使える器です。最初の一つは、毎年冬に出してくるものとして選んでください。

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火から下ろして、そのまま食卓へ。信楽の耐熱土でつくられた土鍋を、作り手から直接お届けします。志野・黄瀬戸・天目、釉の出方は一点ずつ違います。

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FAQ

土鍋(どなべ)とは何ですか
土鍋は、厚い陶土で作られた直火用の鍋です。温まるのが遅く、冷めるのも遅い。その遅さが米の甘みを引き出し、出汁を濁らず、食卓に出してからも温かさを保ちます。火から下ろしても約1分は加熱が続きます。
土鍋は何号を選べばよいですか
1号がおよそ3cmで、号数はほぼ直径の目安になります。1人なら6号(約18cm)、1〜2人なら7号、2〜3人なら8号、3〜4人なら9号、4〜5人なら10号です。土鍋は八分目までしか入れられないので、迷ったら人数より一つ大きめを選んでください。二人暮らしなら8号がちょうどよく、来客のある日にも対応できます。
土鍋は使い始めに何をすればよいですか
目止めをします。八分目まで水を入れ、ご飯を茶碗一杯分ほど加えて弱火で一時間ほど炊き、火を止めて自然に冷まします。米のとぎ汁でも代用できます。でんぷんが土の細かい隙間を埋めるので、水漏れと匂い移りを防げます。ごはん鍋は最初に一度炊けば目止めを兼ねます。仕上げに洗って、完全に乾かしてから仕舞ってください。
土鍋にひびが入ったらどうすればよいですか
釉の表面に入る細かい線は貫入で、割れではありません。使い込んだ土鍋にはたいてい入っています。水漏れが出るような深いひびは、おかゆを炊くと塞がることがあります。目止めと同じ原理で、でんぷんが隙間に入って固まるためです。一度で塞がらなければ、もう一度試してみてください。

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