作家 前田麻美|イッチンと陽刻で、色ではなく高さで描く磁器

花文のレリーフが浮かぶ白磁の八角皿。数枚重ねた上に一枚、木のテーブルに緑の葉が添う

花びらや葉の形をした美しい白磁。中央には花唐草の文様が、描かれた手仕事感じる美しい器。イッチン技法や絵付けの技法を用いた前田麻美氏の作品は、独特の美しい形、そして手仕事感じるひと工夫が魅力的です。

拠点は京都。ブランド名は jiucasca。長い乾季のあとに降る、かすかな慈雨のような器でありたい、そんな願いを込めた名前だと聞いています。

白磁、青みを帯びた灰青釉、金属のような光沢のブロンズ釉。形状、技法だけでなく、色合いの違いも楽しめるのが、さらなる前田麻美氏の作品の特徴です。

前田麻美氏の器は前田 麻美コレクションにまとまっています。豆皿から7寸皿、マグカップ、花器まで、様々な色、形、技術の器からお選びいただけます。

特徴的な2つの技法

前田麻美氏の美しい作品の模様のつくりには二通りあります。ひとつがイッチン。泥漿と呼ばれる泥をスポイトに入れ、絞り出しながら線を置いていく技法です。ケーキにクリームで文字を書くのに近い動きですが、置いた線は乾くと縮み、焼くとさらに縮みます。太さを一定に保つには、絞る力と手の速さを揃え続けなければなりません。非常に繊細な技法です。

もうひとつが陽刻。型を使って素地に凹凸を写し取り、文様を浮かび上がらせます。前田氏の稜花皿の中央にある花唐草は、この陽刻です。

どちらも共通しているのは、色ではなく高さで模様をつくるという点です。だから釉をかけて焼くと、彫りの谷に釉が厚くたまり、山では薄くなる。ひとつの釉薬だけで濃淡が生まれます。マグカップの側面を光に傾けると、模様が消えたり現れたりするのはこのためです。

ブロンズ釉の稜花皿2枚。金褐色の地に唐草と花文の陽刻が浮かび、縁が金属質に光っている

三つの釉、その上に描かれる染め付け

同じ形の皿でも、かける釉によって別の器になります。

  • ブロンズ釉 金属的な結晶が光る、渋い金褐色。蚤の市で見つけたアンティークの金物のような佇まいになる
  • 灰青釉 淡く透明感のある青緑。彫りの深い部分に色が沈み、みずみずしいグラデーションが出る
  • 青白磁 わずかに青みを帯びた白。青磁と白磁のあいだにある色

これに染付の小花紋が加わります。藍の呉須で描いた小花を白磁に散らしたもので、こちらは凹凸ではなく絵で見せる系統です。釉薬の種類を知っていると、同じ棚に並ぶ器の違いがはっきり見えてきます。

素地はいずれも磁器です。水を吸わないので、目止めは必要ありません。その日の気分ですぐに利用を開始することができます。

白磁の角皿に藍の小花紋が散らされている。傍らに枯れ枝が置かれ、白と藍の対比が際立つ

京都という産地の、自由さ

信楽や備前のように、土が作品の特徴の性格を決めた産地もあります。京焼・清水焼はその逆です。京都には焼きものに適した土があるわけではなく、その土地の魅力から、作家が集まり、文化が生まれた土地です。

土に縛られないぶん、様式も縛られません。磁器も陶器も、絵付けも彫りも、京都では同じ土地の中に並んで存在します。その中で、まさに、花びらや葉の形をした美しい白磁。中央には花唐草の文様が、描かれた手仕事感じる美しい前田麻美氏の器も生まれています。

どんなシーンでもイキイキと食卓を彩る前田麻美氏の作品

前田氏の器は、大きさの展開がそろっているのが強みです。同じ稜花・同じ花唐草で、豆皿・小皿・中皿・7寸皿があります。サイズ違いで同じ形状を揃えても良い。使い所に合わせて、使い分けても良い。使い方の楽しさは無限大です。

  • 豆皿・豆々皿 塩、薬味、一粒のチョコレート。指輪やピアスを置くトレイにも
  • 小皿 取り皿として。マグカップのソーサーにも合う
  • 中皿 少し深さがあるので、汁気のあるおかずやサラダ、パンにも
  • 7寸皿 立ち上がりのある縁が料理を受け止める。菓子皿としても

白磁のマグ、菊形の豆皿、ブロンズ釉の皿や六角皿をコンクリートの上に並べたところ。同じ文様が大きさ違いで揃う

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白磁、灰青釉、ブロンズ釉。同じ文様が大きさを変えて並びます。京都の工房から、一点ずつお届けします。

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FAQ

前田麻美さんの器はどこでつくられていますか
京都です。jiucasca という名前で制作しています。京都は焼きものに適した土の層がなく、各地から土を取り寄せて焼いてきた産地です。土に縛られないぶん、磁器も陶器も、絵付けも彫りも同じ土地に並んで存在します。
イッチンとはどんな技法ですか
泥漿と呼ばれる泥をスポイトに入れ、絞り出しながら線や点を置いていく技法です。置いた線は乾くと縮み、焼くとさらに縮むため、太さを一定に保つには絞る力と手の速さを揃え続ける必要があります。釉をかけると彫りの谷に釉がたまり、濃淡が生まれます。
磁器なので手入れは簡単ですか
水を吸わないので目止めは不要で、洗ってその日から使えます。ただしイッチンや陽刻の彫りの谷に汚れが残ることがあります。柔らかいスポンジで撫でれば落ちます。硬いたわしでこすると釉を傷めるので避けてください。急な温度差も避けてください。

日本の器をはじめから知りたい方へ。歴史、陶器と磁器の違い、素材、手入れまでを一本にまとめています。→ 日本の器・完全ガイド|はじめての一枚から歴史まで

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