TATA pottery studio|京都、ふたりで一つの器をつくる可愛い器

器をつくる人と、絵を描く人。TATA pottery studio は、そのふたりで成り立っているユニットです。
成形を担うのが陶芸家の田中大輝氏、絵付けを担うのが絵付師の田辺桂氏。ひとりの作家が最初から最後まで手を動かすのが当たり前の世界で、工程を二人で分け合っている作り手は多くありません。
並んだ器を見ると、その構造がそのまま表に出ています。かたちは驚くほど静かで、絵は驚くほど自由。白い磁器の上で、猫が眠り、熊がマフラーを巻き、赤いドレスの少女が花を抱えています。
TATA pottery studioのコレクションにまとめています。絵柄が一枚ずつ違うので、まず全体を見比べてみてください。
ふたりで一つの器をつくる
TATA pottery studio は、自分たちの目指すものをこう書いています。
「私たちの作るうつわは使いやすさと愛着を感じられる器を追求しています」。
使いやすさと愛着。この二つは、実は担当が分かれています。使いやすさは、かたちの側にあります。手に馴染む厚み、重ねたときの収まり、口当たり。ここは田中氏の仕事です。
愛着は、絵の側にあります。棚を開けたときに目が合う猫。毎朝そこにいる熊。器を選ぶ理由が「好きだから」で完結してしまう強さは、絵付けが持ち込むものです。
二人で分けているからこそ、両方を妥協しなくて済む。そういう分業です。
田中大輝の成形|型とろくろ、シンプルに徹する
田中氏は型とろくろを使って成形します。本人の言葉では「シンプルながら使い込むごとに良さがでてくるのが特徴」。
実際、かたちだけを取り出すと本当に素っ気ないほど静かです。丸皿、角皿、マグ。装飾的な突起も、極端な歪みもありません。
ただし、よく見ると細部が効いています。皿の縁は細かく波打ち、放射状のリブが立っている。マグは面を取って角ばらせたものと、丸くふくらませたものがある。光が当たると、その凹凸が白い地に薄い影をつくります。絵が乗る前から、器の表面には既に表情があります。
そして縁には、鉄の錆色が一本だけ回っています。この細い線が白磁の輪郭を締め、内側の絵を額装するように囲む。轆轤成形の記事で触れたとおり、成形の段階で決まることは多く、絵を引き立てる下地は、絵を描く前に完成しています。

田辺桂の絵付け|東山の百年窯で、今も現役
絵付けを担当する田辺桂氏は、京都・東山の百年以上続く窯元で、今も絵付師として働いています。
東山は京焼・清水焼の中心地です。五条坂から清水寺へ向かう斜面に窯が密集し、絵付けを専門にする職人が独立した職能として存在してきました。京都の焼き物は、分業で成り立ってきた産地です。TATA pottery studio の作り方が京都から出てきたのは、偶然ではありません。
器を見ると、技法が二層に分かれているのがわかります。
| 層 | 色 | 器の上での役割 |
|---|---|---|
| 釉の下(下絵付け) | 呉須の藍 | 猫や熊の輪郭、ドレスの線、地の帯文様 |
| 釉の上(上絵付け) | 赤・黄・緑・橙・桃 | 花、ドレスの色、マフラー、縁の点 |
藍だけで描く染付の線が骨格をつくり、その上から上絵付けで色が置かれる。藍は焼く前と焼いた後で色が変わるため、描く時点では仕上がりが見えません。その顔料については呉須の記事にまとめています。
そして重要なのが釉薬です。TATA pottery studio は「釉薬の色合いにもこだわり、絵付が映えるよう特別に調合されています」と書いています。白磁の白は、本来わずかに青く硬い白です。そこを少し和らげておくと、上に乗る赤や黄が沈まない。釉薬の話が、そのまま絵の見え方に効いています。

磁器と陶器、二つのシリーズ
TATA pottery studio の作品には磁器シリーズと陶器シリーズがあり、「それぞれ違う印象で使う人の好みに合わせた多様な作風がある」とされています。
この二つは、素材からして別ものです。
| 項目 | 磁器 | 陶器 |
|---|---|---|
| 原料 | 陶石を砕いた石の粉 | 粘土 |
| 地の色 | 白く、絵が明るく出る | 土の色が残り、絵が落ち着く |
| 手触り | 硬く、薄く、軽い | 厚みと温かさがある |
| 使い始め | 目止めは不要 | ものによって目止めをすると安心 |
違いの詳細は磁器と陶器の記事にまとめています。絵柄で選ぶか、手触りで選ぶか。同じ作り手の中に二つの入口があるのは、この工房の贅沢なところです。
何が描かれているか
画題は大きく三つに分かれます。
- 動物 猫、犬、熊、兎、パンダ。眠っていたり、笹を抱えていたり、マフラーを巻いていたりする
- 少女 大きく広がったドレスを着て、花を抱えたり、カップを持ったりしている
- 草花 椿、小花、唐草。動物や少女の周りに散らされ、余白を埋めすぎない位置に置かれる
面白いのは、これが和食器の伝統的な画題ではないことです。和食器の絵付けで扱ったような吉祥文とは系統が違います。にもかかわらず、器の上では違和感なく収まっている。
理由は線にあります。輪郭を藍の一本線で取り、色を面で置く。この描き方自体は染付と色絵の伝統そのもので、そこに乗せる「絵」だけが現代になっています。技法は古く、画題は新しい。だから甘くならずに済んでいます。
同じ「少女」でも、格子の上に立っているもの、椿に囲まれているもの、カップを持っているものと展開が違います。手描きなので、同じ画題でも線の勢いと配置は一枚ずつ変わります。

暮らしの中での使い方
絵が主役の器なので、盛り方の原則ははっきりしています。
見込み(皿の内側)に絵があるものは、料理で絵を隠さないのが基本です。中央を空けて、食材を片側に寄せる。和菓子をひとつ、果物を数切れ、朝のトーストを一枚。それだけで絵が額の中に収まります。
逆に、縁だけに文様があるタイプは全面に盛って構いません。長角皿は焼き魚や前菜の盛り合わせ、丸い菊形の皿は取り皿として、どちらも毎日の出番があります。
カップと小皿を組み合わせると、絵が二つ並びます。猫のカップに、少女の受け皿。組み合わせを自分で決められるのは、一点ずつ違う器だからできることです。TATA pottery studioのコレクションでは、絵柄ごとに並べて見比べられます。
TATA pottery studioの器の手入れ
磁器なので目止めは要りません。ただし色絵は釉薬の上に乗っているため、金属たわしと研磨剤入りのクレンザーは避けてください。やわらかいスポンジで十分に落ちます。
金彩は使われていないので、電子レンジの可否は器種によります。判断に迷ったら、日々の扱いは和食器の手入れにまとめています。

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京都の焼き物
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静かなかたちの上に、自由な絵。京都の分業から生まれた磁器と陶器を、工房から直接お届けします。手描きなので、同じ画題でも線は一枚ずつ違います。
TATA pottery studioの器を見るFAQ
TATA pottery studio と田中大輝氏はどういう関係ですか。
磁器シリーズと陶器シリーズはどう違いますか。
絵付けの器は食洗機や電子レンジに使えますか。
日本の器をはじめから知りたい方へ。歴史、陶器と磁器の違い、素材、手入れまでを一本にまとめています。→ 日本の器・完全ガイド|はじめての一枚から歴史まで